白井松次郎、大谷竹次郎という兄弟が、関西で会社を立ち上げ成功して、
その後東京へ出て、演芸と演劇の興行権を次々に手中にしていった。
そして、時代の趨勢という追い風を受けながら、ついに歌舞伎を掌中に
収めたという歴史があります。
その松竹は、創業者大谷竹次郎の興業指針、「歌舞伎は襲名と追善だ」と
いう遺訓をその後継者である永山武臣前会長が金科玉条として守り、
実際に成功させて今に至ります。
旧歌舞伎座で10年来続いた襲名ラッシュ、歌舞伎座閉場後の、
なお続いた意外な襲名。こう見てくると、新歌舞伎座もおそらく、
こけら落としが一段落するか、あるいは、こけら落としの一環として、
襲名披露興行を企画することは、じゅうぶん考えられます。
まず、中村福助の七代目歌右衛門襲名。これはまちがいないでしょう。
大襲名になります。おそらく一緒に、弟の橋之助が父の名跡を同時に
襲名ということになるのでしょう。さらに橋之助の3人の息子にも
なにがしかの名前を与える、というトリプル襲名もありえます。
これが一番の目玉企画なはずです。
もう一つ、女形の名跡があります。中村雀右衛門。昨年91歳で
亡くなった雀右衛門の次男の芝雀が継ぐことは間違いありません。
芝雀は近年もっとも力をつけてきた女形ですから、実のある襲名に
なるでしょう。近い親類に高麗屋、播磨屋、成田屋がいるという
強みがあり、派手になるはずです。
それから、中村富十郎襲名。これは早いうちにあると思います。
現、松緑が10代で父と祖父を相次いで亡くし、異例の若年で
おじいさんの名跡を継いだように、富十郎の遺児、鷹之質(たかのすけ)が、
70歳ちがいの実の父親(!)の名を早く継ぐことはじゅうぶんありえます。
坂東玉三郎の守田勘彌襲名はなさそうですから、あとは先代がそうしたように、
松本幸四郎の、息子染五郎への「生前贈与」でしょう。