不動産の売買では、契約成立時に買主から売主に対して
「手付金」が支払われる慣習があります。
この手付金は、特別な取り決めが無い限り、「解約手付」となります。
解約手付というのは、契約が履行されるまでの間、お互いに
契約の解除権があることを意味し、買主は手付金を放棄する、
売主は手付金の倍返しをすることによって契約を解除することが
できるということです。
この契約解除においては、双方とも手付金以外の損害賠償の
責任を負うことはありません。
ただし、売主がすでに建築を開始したり、あるいは登記を
行っていたりした場合、また、買主が中間金の支払いを終えていたり、
引越しの準備をしていたりした場合は、契約が履行されたことになり、
契約違反としての違約金を支払わなければなりません。
ちなみに、不動産売買には通常、「ローン特約」というものがあり、
不動産を購入するための資金を銀行などから借入できなかった場合は、
無条件で契約を解除でき、手付金も返還してもらえます。
また、不動産売買においてもクーリング・オフ制度は適用され、
例えば、テントや仮設小屋での販売、あるいは訪問販売など、
事務所以外の場所で売買契約を結んだ場合は、契約日から
8日以内であれば、無条件で契約の解除ができます。
ところで、不動産売買では買主は高額な代金を売主に支払います。
そのため、もし、契約途中で業者が倒産すると、買主は多大な損害を
被ることになります。
そこで、宅建業法は手付金などの返還を保証するため、業者に対し、
銀行や保険会社などと保証委託契約を結び、手付金などの
保全処置を取ることを義務付けています。