雑記

江戸川乱歩の長編小説の価値と魅力

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memo1228
江戸川乱歩は「探偵小説の祖」と呼ばれ、今もなお多くのファンを
持っている稀有な作家です。

ちなみに「探偵小説」というのは今は死語に近く、「推理小説」と
呼ぶのが一般的です。これは戦後、当用漢字、常用漢字の規定ができて
「偵」の字が使えなくなり、やむなく「推理」と言い換えたのが始まりです。

乱歩の作家デビューは大正12年の「二銭銅貨」。これは暗号小説で、
エドガー・アラン・ポーの「黄金虫」に影響を受けながら、
「南無阿弥陀仏」の六字をカギに使うという、日本オリジナルの傑作となりました。

以後、つぎつぎと意欲的な短編を発表、一躍人気作家となりました。
その後、主に新聞連載の長編大衆小説、さらに昭和10年代から始めた
「少年探偵団シリーズ」と、新境地を開いていきます。

しかし、専門家の評価はその多くが、初期の短編に向けられており、
少年物はともかく、長編大衆小説の作品は、まともに評論評価されることが
極端に少なくなっています。

中には「チャンバラもの」と称する人もいます。
明智小五郎と犯人の戦いをチャンバラのような活劇として
描いただけの小説、の意です。

つまり、デビュー作から昭和初期の「押絵と旅する男」あたりまでの短編群、
そしてその集大成ともいえる中編の傑作「陰獣」と「パノラマ島奇談」こそが、
乱歩の作家としての価値だというわけです。

しかし、乱歩の値打ちは「チャンバラ小説」にもあります。
「一寸法師」から始まるこの長編群には短編とはまた別の乱歩ワールドが
ぎっしり詰まっています。

彼の独特の語り口調、わざと長文でくどくどしく書くことで、得も
言われぬ怪奇味、サスペンス感を表現するというテクニックは、
長編でこそ楽しめるものです。

「文芸」といいますが、乱歩の長編のように「芸」を強くじさせる小説は、ほ
かにそう多くありません。

「蜘蛛男」「魔術師」「黄金仮面」「地獄の道化師」「緑衣の鬼」「大暗室」「白髪鬼」などなど。
翻案ものも含めて余人には描きえない万華鏡世界が展開されています。

近年、乱歩ファンの一人である歌舞伎役者、市川染五郎が企画し、
乱歩作品を歌舞伎劇化、上演しました。

長編の「人間豹」です。染五郎の犯人役で、明智小五郎は父、
松本幸四郎が演じました。この作品こそ究極の「チャンバラ小説」とも言え、
だからこそ、乱歩の「体臭」が最も濃い傑作であると断言します。

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