セールスマン業界には、共通の裏マニュアルというものが
流通しています。
初めは対面で座って会話していたつもりがいつのまにか
横に座っていた……などという状況は誰でも体験したことが
あるはずです。
これは実は、お客の心を掴むための効果的な手法でもあるのです。
まず販売員はお客様と対面して応対します。
席に着く場合でもテーブルを挟んだ向かいに座るのが普通です。
最初から近くに寄りすぎれば警戒されてしまうのは自明だからです。
そうして対面での会話を進めてから、販売員はテーブルの横、
ちょうどL字型になる位置に移動します。
こうすることで、それまで対面であったが故になんども
ぶつかっていた視線を、自然にずらすことができるようになるのです。
緊張からリラックスへ、気分を上手く誘導するための智慧と
いうものですね。
ここから更に販売員は、お客様の真横にまで移動してきます。
これはL字型の位置ではどうしても『押し』が弱くなるための行動で、
横に座ることで、まるで友達に接するかのような『遠慮』と
いう感情を生じさせ、断りづらくしてしまうのです。
ただし、これを上手くやってのけるためには相当な技術が必用で、
いきなり席を詰めていったら今度はお客様の心が
離れていってしまいます。
そこで販売員はどうするかというと、一旦お茶や史料を
取りに行くなどとの口実を設けて席を立ち、戻ってくるときに
自然に隣に腰かける、という手法を用いるのです。
なんともはや、ただの販売員やセールスマンが、
人間の心理をここまで理解し利用しているとは驚きです。