彼らは所作のひとつひとつ、それこそ足運びからおじぎの
角度まで徹底的に叩き込まれた、言わば接客のプロフェッショナルです。
そのプロに相応しい応対は、その辺りのファミレスなどとは
比較にもなりません。
例えばフロント係やベルマンなどは、常にメモ帳を持ち歩いて、
自然な会話の中からお客様の趣味などを聞き出し、今後の対応に
役立てるようにしているのだとか。
こういったメモを取る場合、または何らかの注文を伺う場合に
さっと取り出すのがボールペンですが、実はこれにこそ大きな
秘密が隠されていたのです。
ボールペンはそれこそ高いモノなら数万数十万の金額が並ぶ世界です。
普通のボールペンと高級品の違いは、素人でも一目見ればわかります。
しかし一流のホテルマンは、高級品だけを持ち歩いているわけではありません。
実際には安価な価格のボールペンも隠し持っているのです。
いったいなぜそのようなことをしているのかというと、ホテルの
システムに深い理由があったりします
例えばロビーなど人が多く訪れる場所。この辺りに配属されたホテルマンは、
当然ながら高級な部屋だけでなく、ランクの低い一般向けの部屋に
泊まるお客様とも接することになります。
そんな場所で高級なボールペンをこれみよがしに晒してしまえば
「気取っている」という印象を与えかねないのです。
一方、高級レストランやスイートルームがある高層階などでは、
ホテルに高級感を求めるお客様とのみ接することになります。
そこで安物を取り出せば、失望を与えることになるでしょう。
だからこそここでは高級なボールペンのみを用いることが求められるのです。
お客様が求めるものを提供する。これがプロのホテルマンの神髄なのかも
しれません。