A(売主)がB(買主)とバイクの売買契約をしました。
バイクは50万円で売れました。Aはその50万円のうち10万円を
生活費として使い、20万円を競馬で使って全額スってしまいました。
現在手元には20万円残っています。
ところが、その後Aの親権者CがAが未成年であり、同意なく取引をしたと
いうことで先の売買契約を取り消すといいだしました。
この点、民法では未成年者が法定代理人の同意を得ずにした契約は
取り消すことができるとされているため契約は取り消すことができます。
よって、Bはバイクを返還しないといけません。
ここで問題です。AはBにお金をいくら返す必要があるでしょうか。
正解は50万円ではなく30万円です。
内訳は、手元にある20万円と生活費に充てた10万円です。
ポイントは、競馬で負けた20万円については返す必要がないということです。
なんだかおかしな気がしませんか?
生活費は返して競馬代金は返さないなんておかしい、逆なんじゃないか?と
思われる方も多いのではないでしょうか。
しかし、これで合っています。
理由は、法律上、未成年取り消しの場合は現存利益を
返還すればよいとされているからです。
(現存利益の返還とは、現に利益を受けている限度での返還という意味です。)
そして、手元の20万円は現に利益を受けていることは明らかです。
では生活費はどうかというと、生活費は仮にバイクの売却代金が
なかったとしても必ず支出される金額だったはずだから、
その分はまだ使わずに残っている(本来使うべき20万円が別に手つかずで残っている)と
考えます。つまり、当初予定していた支出を免れたという意味で
現に利益を受けていると考えるのです。
翻って競馬代金はどうかというと、これは当初から予定していた支出とは
考えにくく、バイクの売買代金によってその支出を免れたとはいえません。
そのため、現存利益がないと判断されるのです。
心情的には競馬で負けた分を返せと言いたくなりますが、
法律上はそのような請求はできないことになっています。
未成年者相手に取引をするときは十分に注意する必要があります。